超小型CCDを採用した、先端部外経5.0mmという、鉛筆よりも細い極細スコープです。鼻からでも口からでも挿入可能です。
内視鏡検査は「口」から「鼻」へ
内視鏡を入れる場所が「口」から「鼻」へ変わるだけで、患者さんの感じる苦痛の度合いは全く異なります。
口からの内視鏡検査では、「舌根」と呼ばれる舌の付け根の部分を内視鏡が圧迫してしまうため、嘔吐反射が必然的に起こります。それを抑えるために、キシロカインという麻酔ゼリーで舌根の感覚を麻痺させるのですが、これで嘔吐反射が完全に抑えられるわけではありません。そのため、ほとんどの場合は鎮静剤を投与し、意識がもうろうとした状態で検査を行います。
しかし、これらの前処置にはいくつかの問題点があります。舌根に麻酔をすると口の中が痺れた状態になり、麻酔がきれるまでの1、2時間は食事をとることができません。鎮静剤の注射も、精神科などで使われる効き目の強いもので、酔っぱらった時と同じような状態になります。そのため、検査終了後は車の運転もできませんし、もちろん学校や仕事などへも行けません。
また、高齢者の方は、誤嚥して肺炎になったり、内視鏡検査中に酸素濃度が下がってしまうこともありますので特に注意が必要です。
苦痛が少なく優しい検査
経鼻内視鏡検査は鼻から内視鏡を入れるので、舌根を圧迫することがなく、嘔吐反射がほとんど起こりません。鼻の中に入れるごく軽い麻酔だけで内視鏡を容易に挿入することができます。そのため舌根への麻酔も鎮静剤の投与も不要です。検査中も話ができるので、内視鏡画像を見ながら説明を受けたり、質問したりすることが可能です。また、心拍数や血圧が急激に上がったり、酸素濃度が下がったりすることもほとんどありませんので、患者さんの身体的負担も軽減されます。鎮静剤でボーッとするようなこともありませんので、若い方でしたら検査後そのまま学校や会社に行くこともできます。「すぐにいつも通りの生活に戻れる」というのが、経鼻内視鏡の最大のメリットであるといえます。
検査の手順
経鼻内視鏡検査を行う際には、まず両方の鼻の穴に血管を収縮させるくすりをスプレーします。これにより、出血がおきにくい状態にもなりますし、血管が収縮することで鼻腔が広くなり、内視鏡が挿入しやすくもなります。その後、通りのよい方の鼻腔に麻酔ゼリーを入れます。鼻から入ったゼリーの一部が喉の方にも流れるため、喉にも多少の麻酔がかかります。そして最後に麻酔薬を塗った細くて柔らかい管を鼻から挿入し、喉の手前でしばらく留置します。鼻腔内の通り道にそって麻酔ができます。2、3分で管を抜き前処置は終了です。
その後、胃の動きをゆっくりにする筋肉注射をして、いよいよ内視鏡を挿入します。検査中は話もできるので、内視鏡画像を見ながら説明を受けたり、質問したりすることが可能です。特に問題なければ、8分前後で検査は終了となります。
今後の展望
もちろん、経鼻内視鏡にも欠点がります。まれに鼻の穴が狭く、内視鏡が入らない方がいますが、のどの麻酔を追加して、そのまま細径内視鏡で口から挿入することができます。もう一つの欠点として、口から入れるハイビジョンの内視鏡に比べると画像(画素数)がやや劣るということと、病理検査を行う際に使う鉗子が細いため採取できる組織の大きさも自ずと小さくなることがあげられます。ですから、「検診は経鼻内視鏡で行い、何か異常が見つかったら口からの内視鏡で細かく調べる」という使い分けが必要です。
日本全国で上部内視鏡検査(胃カメラ)は1年間に約1000万件行われています。現在、その1割が経鼻内視鏡検査といわれております。急速に経鼻内視鏡は普及してきており、今後さらに需要が拡大していくものと思われます。